はじめまして!OpenSalaryを創設したDrew(ドリュー)です。OpenSalaryというウェブサイトを制作し数ヶ月前にローンチしました。

OpenSalaryは、日本のテック企業の給与データをできるだけオープンに共有することを目的にしたウェブサイトです。年収データは通常、企業の一部の誰かにだけ開かれた情報ですが、誰でもその情報にアクセスできるようにしたいと考えました。必要な情報に誰もが平等にアクセスできることで、受け取る報酬が正当か判断したり、オファー額の交渉や、自身のキャリアゴールに合った企業を見つけたりすることができるように願っています。

OpenSalary立ち上げの背景

私はカリフォルニア出身で、日本に来たのは5年前です。来日してすぐに気が付いたことは、企業に関する情報量が、少なくともアメリカと比べて、圧倒的に少ないことでした。日本でソフトウェアエンジニアのオファーを受けた時、自分の年収が適正なのかどうか多くの知り合いに確認しました。妥当な報酬額が分からなかったからです。そこで判明したのが、(ほとんどの人が自分自身の経験から判断しているので)なにが正当なソフトウェアエンジニアの給与なのか多くの人がまったく違う考えを持っていることでした。

日本でも何度か転職をしましたが、その度にどのくらいの給与になりそうか周りに聞いて回りました。すると、似たキャリアやスキルを持ち、同じ会社で働いていたとしても、年収に大きな差があるのだと徐々に気づきました(年収に倍の差があることも珍しいことではありません)。また、このように給与額に差が生じることは、頻繁に起こっています。なぜなら、日本では転職の際、転職先の会社に現職の給与を伝えることが求められ、例え転職先の給与が全体的に高かったとしても、その会社は現在の給与から少しだけ高い給与を提示することが一般的だからです。こんな話しを聞くたびに、残念な気持ちになりました。

その頃、「給与の透明性」という言葉をメディアが使い出し、企業も「透明でオープン」なカルチャーを作ろうとしていると耳にすることが増えました。その企業のひとつがソーシャルメディアプラットフォームサービスのBufferでした。Bufferは、民間企業でありながら売上(2,000万ドル超)や社員のデモグラフィックスをリアルタイムで見られるダッシュボードを公開するなど、過激な透明性を追求する企業としてとても有名です。これに加えて、100名以上の全社員の給与を実名と共に公開しているのですこのスプレッドシートから給与情報にアクセスできます。

これをみて、なぜ自分の年収を話すべきではない、触れるべきではないと人はプレッシャーを感じるのか強く疑問に感じました。そこで、私がよく耳にする「給与を話すべきでない理由」と、「私がなぜその理由に違和感を感じるのか」をまとめました:

自分の(高い)給料を共有するのは恥ずかしく、周りの人を嫌な気持ちにするかもしれない

自慢したくない、謙虚でいたいという気持ちは誰もが持っているので、この理由は理解できると思います。ただ、誰でも情報は少ないよりも多い方が良いはずです。ある人の年収の方が高いと分かったことで、誰かが嫌な気持ちになるかもしれませんが、この情報が他の誰かのキャリアの判断に役立つかもしれません。また、どんな経験やスキルがキャリアアップに必要なのかも把握できます。もし報酬が正当でなければ、昇給を交渉したり、転職のきっかけにもなり得ます。

競合他社に情報が伝わることを懸念し、会社が社員へ給与情報を共有しないように伝えている

あまり良い理由ではないと思います。競合他社が人材を引き抜くことを懸念して、社内の給与データが外に共有されないようにしているのだと思います。確かに、企業側には給与情報を隠すことに短期的なメリットはあるかもしれませんが、社員にとってのメリットはなんでしょうか。他社がより高い給与なのであれば、現在の会社が市場価値で報酬を決めていないのかもしれません。

自社の報酬制度が公平でないこと、それを社員が知ることによって不快に思うと分かっているので、会社は社員に給与情報を共有しないように伝えている

報酬が正当でないのであれば、企業はその問題を隠すのではなく、積極的に修正するべきであり、市場性に合った正当な報酬を社員へ払えるよう努力し続けるべきだと思います。

他にも多くの様々な理由を聞きましたが、考えれば考えるほど、情報の透明度を高めることのメリットがより大きいと確信し、OpenSalaryの立ち上げに繋がりました。

https://opensalary-public.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/CompanyPage.png

情報の透明性がもたらすメリット

一方で、日本で給与情報の透明性を高めることでもたらされるメリットとは:

情報をもとにキャリアの判断ができるようエンパワメント

自社の給与情報へのアクセスがあれば、社内で報酬が正当に決められているのかどうかが分かります。また、自分のキャリアで、どこまでの報酬が社内で見込めるのか把握することも可能です。

他社の給与情報へのアクセスがあれば、市場価値で自分の給与が決まっているのかが分かります。もし転職を考えていれば、どの企業なら希望する報酬を目指せるのか、年収を上げることができるのか検討ができます。

また、転職の際、前職の年収ではなく、この情報が給与交渉に使えます。

企業側へのメリットと期待値のアライン

給与の透明性は、企業側にとっても役立ちます。あるポジションのあるべき市場価値を理解していない企業もあります。これによって、意図せず給与が低くなっていたり、高くなっていることがあります。データや情報がもっとオープンであれば、会社は市場のどこに位置するのか定義でき、社員の給与を市場価値で決めることができます。

上記に加えて、社員がこの給与情報を事前に知っておくことで、求人に申し込んだ段階で何を期待すべきか把握できているので、オファーの承諾率も上がるはずです。

最後に、正当に報酬が決められていると知って働くことで、前向きに仕事ができますし、社員のリテンションや長期的に良い結果に繋がります。

労働市場と賃金引き上げ

日本の賃金が長い間上がっていないことは、広く知られています。給与データがよりオープンになることで、優秀な人材は、競争力のある報酬をオファーする企業に集まるでしょう。残りの企業は、自社の賃金を再評価し、競争力のあるレベルまで引き上げなければ、採用や人材を留めておくことが難しくなります。この給与情報が、日本の労働市場をより健全で効率的な市場へ導くことができるはずだと信じています。

https://opensalary-public.s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/explore-salaries.png

OpenSalaryの目標

上記の通り、給与の透明性がもたらすメリットは多いと確信しています。そのために、私がOpenSalaryで達成したいゴールは:

  • 前職の給与額ではなく、市場価値で給与が決まる
  • 給与データに対して企業の姿勢がよりオープンになり、全般に透明性が高まること
  • 自分の報酬が市場価値に合っていない場合に、それに気づける。また、これに対してアクションが取れるようにエンパワメントする
  • 自分の正しい価値で給与が決まる、そんな仕事やキャリアをスタートできるのだと、きっかけを与える
  • 届くと思っていなかったキャリアゴールに向けて進もうと思える給与、それを得ることが可能なんだと、給与に対する意識を変える

OpenSalaryがどう役立てるか

とてもシンプルです。匿名で年収データや実際のオファーレターを提出するフォームがOpenSalaryにあります!役割、レベル、経験年数ごとに給与の全体像がわかるように集計した統計値を表示しています。ただ、これだけでは詳細がわからないので、元のデータポイントも表示しています。これによって、過去に企業がオファーした給与やオファーできる給与、実際のオファーなど個々のケースが把握できます。また、誰でもこのデータにアクセスができます。平等なアクセスの機会を提供することで、OpenSalaryのコミットメントを果たしています。

どのように給与データを認証しているのかよく質問も受けます。現状は、外れ値を見つけるためにマニュアルでレビューをしています。企業と直接話す機会があれば、その際に確認をすることもありますし、ユーザー自身が疑わしいデータを報告できるようにもなっています。

また、情報を提出する際のアカウント作成やEメールアドレスの登録は必要ありません。OpenSalaryは、情報の保護、匿名性を大切にしています。Eメールアドレスをいただいていないので、OpenSalary、就業されている会社、他の第三者が、連絡先を特定できたり、外部へ共有することはありません。また、より詳細な情報へのアクセスにはアカウント作成を要求するサービスが多いですが、OpenSalaryは、誰もが全ての情報にアクセスできるべきだと考えているので、アカウント作成の必要もありません。

協力のお願い

一番シンプルにサポートいただける方法は、情報をこちらのフォームから共有いただくことです。ログインも必要ありません。たった45秒で完了します。 この情報共有が、他の多くのひとの役に立ちます。

OpenSalaryのウェブサイトや、この記事を周りの人に共有していただくことも、OpenSalaryのメッセージと思いを伝えることに繋がります。

そして、OpenSalaryをより良くしていくためのフィードバックをぜひ送ってください。全てのフィードバックに目を通し、改善に役立てます。[email protected]から、またはtwitter上でツイート、DMでも大丈夫です。フィードバックをお待ちしています。

ここまで読んでいただきありがとうございました。テック業界に情報の透明性がもっと広がるように一緒に協力していきましょう!

Drew Terry / OpenSalary 創設者

サンフランシスコ出身で、キャリアのほとんどはテック業界。大学を卒業する年に日本への興味が強くなり、サンフランシスコのスタートアップで1年働いた後、2015年に日本へ渡りました。日本では、小規模のスタートアップから大企業まで様々な会社でソフトウェアエンジニアとして働きました。現在は、日本で有名なECアプリを開発する会社でテクニカルプロダクトマネージャーとして働いています。ちょっとした自分情報ですが、私はアメリカで育ちましたが、母は日系アメリカ人です。自分のルーツの半分は日本人ですが、母は日本語を話せないため、長い間学ぶ機会がありませんでした。そのため、自分で日本語を勉強しています!是非私のTwitterをここからフォローしてください!